天動説シリーズ

天動説 1983~85 

初出は1983年10月東京画廊。《天動説一~八》《天動説№101~105》《天動説№107~112》 計19点 

以降85年11月までに《天動説九~十六》油彩シリーズ、素描シリーズ等を発表。 

64年3月の南画廊におけるルーレットシリーズの発表以降、約20年ぶりの大掛かりなシリーズとなる。 

《天動説一~十六》はキャンバスに鉄棒を縛り付け、その上から絵の具を厚く塗りこめたシリーズで、多くの評論家が指摘するとおり60年代後半から70年代半ばにかけて作られた立体オブジェ群と《天動説》以後の平面作品群との中間的シリーズと言える。 

但し、《天動説》という名前自体は83年が初出ではなく、70~73年頃のオブジェとそれを写真に撮って版画化した作品にその名が見られる。《70年天動説》はオブジェの完成をもって完結した訳ではなく版画に落とし込んで完結をみているわけで、そこから類推すると「立体のオブジェが発するエネルギーをどうやって平面に落とし込むか?」というテーマの元、試行錯誤した作品群すべてに《天動説》の名を冠していると言える。 

天動説の名前の由来は70年大阪万博の時代、日本中の画家が祭典に動員される中、「九州に蟠踞する俺が世界の中心なのだ」という一種のシャレであったようだ。 

画家のプライベートで言えば、77年10月にアトリエを新築し(それまではトタン屋根に焼杉板の一枚壁、ベニヤの床板という劣悪なアトリエ環境だった)、81年に筆者の私が大学進学のため家を出て、落ち着いて制作に励める環境が揃った時期である。天動説の製作開始が81年末頃らしいので、「子育ても一段落し、作品制作に注力できるようになった」というのはあながち間違った類推ではないと思える。 

現在茂久馬のアトリエの保管されている《天動説》は《天動説№116》~1985年「日本現代絵画インド展」 於インド・ニューデリー国立近代美術館~以外は公開されたものはないようである。 

鉄棒と暗灰色の83年天動説から、鉄棒=モノが消え漆黒の絵具の凹凸の84年天動説7、11、12、13,15、そしてナンバーは無いが(おそらくは85年制作と思われる)暗青の絵具を塗り込めた85年天動説は、86年11月に発表される「月光シリーズ」への連続性が見て取れて面白いと言える。(Takuma Kikuhata) 

※画像は現在所蔵中のものだけでレンタルや売却済の作品は含まれていません。展示などご希望の方は、別途お問合せ下さい。画像の再利用は転載を含めて固くお断りいたします。)